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11.08.07 バンフ・マウンテン・フィルムフェスティバルの試写会に行ってきたよ [本や映画、音]

「Banff」って書かれたり「BMFF」って省略されることが多いけど、ここでは話し言葉の「バンフ」で統一しよう。
8月3日、2011年の「バンフ・マウンテン・フィルムフェスティバル」のプレス向け試写会に行ってきた。この「バンフ」がどういうものなのかは、こっちを見てみて。とてもていねいにまとめてあるから、僕が話すよりもずっと分かりやすいと思う。

 BANFF Mountain Film Festival in Japan 2011

本チャンの「バンフ」は「A プログラム」と「Bプログラム」あわせて10本の作品で構成されてるんだけど。今回の試写会ではそのうち6本が上映された。だからその6本についてどういう作品だったかを書いてみようと思うよ。特にメモをとったりしてるわけじゃないから、主人公とか場所の名前や、あらすじに記憶の間違いがあるかもしれない。その場合はまぁ、大目に見てやって。




■Eastern Rises(イースタン・ライズ)


【あらすじ】
小さな頃から釣りに取り憑かれてきたフランクとライアン。アラスカの大自然の中でフィッシングガイドをしたりしたけど、最終的な夢はカムチャッカだった。そこは未だに人の入らない川があり、まるで100年前のアラスカがそのまま残っている。狙うのは90センチを越える巨大なニジマス。「ウンジャ」あるいは「ホッグ・ジョンソン」と呼ばれる川の主に巡り会うため、彼らは巨大な蚊や仲間のいびき、旧ロシアのポンコツヘリコプターなんかに悩まされながら未開の地へと踏み入っていく。

【感想】
 ひと言で言えば「小学30年生の釣り紀行」。こどもの頃からの夢をそのままに、はしゃぐキモチを抱えたまま大人になった。そんな無邪気な男たちの釣りの旅だ。これは見ててとても気持ちがいい。なにしろ同類の男たちが嬉しそうにしてる映像なのだ。仲間だ!って思えるし、オレもこんなとこ行きてぇ〜!って素直に興奮できる。
 驚いたのは釣り方。フライなんだけど、模してるのは虫じゃなくてネズミ。なんと実際、魚の腹を割いてみると中からはネズミや鳥が出てくる。相手にしてるのは虫を食べる魚じゃなくて、肉食の水棲生物だ! ってことで自作のネズミフライをキャスト。しかも下流に向かって投げて、上流に巻き上げていく。そう、この肉食水棲生物は流れに逆らって泳ぐ獲物を捕らえるようなパワフルな魚なのだ! で、釣り上げるのは75cmのニジマス。それでも「こんなのホッグ・ジョンソンじゃない」ってがっかり。75cmってのはちょっとした大人の足の長さだからね。それがまだまだだっていうんだから目指すゴールがすごい。
 最終的にはとても美しい風景の中、ちょっとしたお遊びと感動的な言葉でストーリーは幕を閉じる。
「釣りは社会の役に立たないけれど、心を豊かにしてくれる。役に立たないことをやるために、おれたちはここにいるんだよ」
ってことばが印象的だった。すべての小学30年生たちに捧げたい釣キチムービー。


■The Swiss Machine(スイス・マシーン)


【あらすじ】
 ウエリ・シュテックはスピードクライマーだ。単独でヒマラヤやアイガーに挑み、驚くほどの短時間で頂上をおとしてきた。
「他の連中が出発の準備をしている間に、ウエリはもう頂上にいる」
 といわれるほど。そのスピードを支えているのはたゆまぬトレーニングだ。山を駆け、自らを律する。そして登る時には正確なリズムで着実に前に進む。ウエリはマシーンだ。スイス製の時計のように正確。そして、信頼性に長けている。
 映画の仲でウエリは二度目のアイガーに挑む。かつてメスナーが10時間で登った山を、一度目の挑戦でウエリは3時間50分しかかからなかった。その時点で世界最速。けれどそれは
「自分の限界ではなかった。ただ人より早かっただけだ」
と語る。いったいウエリはどこまで自分を追い詰めることができるのか。標高差2,500mをソロでスピードクライム。スイスマシーンが究極のタイムアタックに挑む。

【感想】
 なぜソロのスピードクライムにこだわるのか。そのメリットとデメリットを丁寧に描くなど、ドキュメンタリーとしての構成がとてもしっかりしてる。
 途中、映像ではヨセミテのエルキャピタンを舞台にアレックスという若手クライマーとの心の交流を描くんだけどね。口数が少ないから言葉も交わさず、交わしても英語を母国語としないからトンチンカン(ウエリのスポンサーのことでおもしろいやりとりがあるよ)。だけど、登り始めると言葉は要らない。こうしてウエリが何に重きをいて、彼の人生の中で何が大事なのかが分かってくるよ。ウエリはストイックな求道者なのだ。求めるものがハッキリしている。ムダをそぎ落とす姿勢は修行僧のようだけれど、アレックスとの交流を描いたことでウエリに血の通った優しい面があることが分かる。ただ記録を追いかけるんじゃなく、自分のやりたいことを最後までやり通したいんだってことが分かる。
 映像的には最後のアイガーがすごい。1,000mもの落差をソロフリーで登る。その落差感は身がすくむ思いだし。空撮は上下の感覚が分からなくなるから見ているこっちが落ちているような錯覚につながる。ラスト、日の当たる山々をバックに稜線を登るウエリ。正確なリズムでどんどん高度を上げていく姿は、まさにマシーンだ。ラストの感動的なシーンはどうやって撮ったんだろう?


■Life Cycles(ライフ・サイクルズ)


【あらすじ】
自転車を作る工場のテクニカルでゴシックな映像。その工場から産み出される、人類の発明の中でもっとも崇高な乗り物「自転車」。森の中を駆け下りるダウンヒルバイクの迫力あるシーンは季節の移り変わりとともに映し出され、畑の中でのトリックライドがエモーショナルな編集で展開される。祖父の言葉を軸に、自転車の奥深さをスローモーションでドラマチックに語った美しい映画。バンフのために特別に編集されたショートバージョン。

【感想】
 オープニングの工場は、まるで映画「ターミネーター」のような重厚感と圧倒的な存在感に溢れてる。溶ける金属、飛び散る火花、切削油を溢れさせながら穴を開けるドリル。そこから一気に森の中へ。細いトレイルを絶妙のバランスでつなぎ、飛び、ターンし、加速していく。ちょっとこの映像だけで自転車乗りたいな〜って思う人も多いんじゃないだろうか。とにかく映像がカッコいい。けれど、なんとなく物語としてのまとまりは甘い気がする。そのあたりの回答は「deeper」にあったような気がするけど。


■deeper(ディーパー)


【あらすじ】
deeperの中からアラスカパートだけを抜き出したもの。これまで45本以上ものスノーボードムービーに関わってきたジェレミー・ジョーンズが、アラスカの壁のような斜度の山に挑む。

【感想】
 正直に言うと、一番残念な作品だった。ってのは僕らスノーボーダーは「deeper」のフルバージョンを見てる。だからジェレミー・ジョーンズがどういう人だか知ってるし、ザビエル・デ・ラ・ルーがどれほどヤバいライダーなのかを知ってる。彼らがなぜ自分たちの足で、誰もいないようなエリアに踏み入って、あんな斜度の山を滑るのか、を知ってる。けれど今回の「バンフ バージョン」ではそのあたりが上手く伝わってこなかった。たとえばジェレミーがスプリットボードという登攀具を選ぶ理由や、ザビエルの山に対する経験なんかがもうちょっと見えてくればおもしろかっただろうな。
 あとはフィンガーになってる斜面をおりてくるヘルメットカメラの映像。あれはもう滑ってるんじゃなくて、おりてる。いや、落ちるのを止めてる。怖さや迫力はあるけど、滑る気持ちよさみたいなものは感じられなくて。その意味でも彼らがなぜあの山に登って、何に価値を見出して、何に快感を覚えてあの斜面をおりてくるのかが分かりにくかったと思うよ。
 つまりこれは、ショートバージョン故の未完成感なんじゃないだろうか。だとしたら、先の「Life Cycles」に感じたもの足りなさの原因も納得だね。
 この「バンフ」で触れる作品の中にはショートバージョンがいくつもある。本当に作り手の意図を知りたければ、描かれてる世界に触れたければ、少なくともフルバージョンを見てからにしろ、ってことだと思う。それを実感したことが「deeper」最大の収穫。当然、家に帰って速攻で「deeper」をみたよ。残念なんてカケラも思わないほどサイコーだった!


■SALT(ソルト)


【あらすじ】
 男は毎年、たった独りでその場所にやってくる。文明から隔絶された場所に自転車でやってくる。目的は写真を撮ることだ。
「風景写真は人の心を揺さぶる。そこに行ったこともないのに」
 と語り、8×10の大判カメラを丁寧にセットし、構図を決め、大自然が描き出す絶景を残そうとする。
 撮影旅行でもっとも大きなウェイトを占めるのは待つことだ。インターバルタイマーを仕掛けたカメラが、正確な感覚で風景を切り取る間、男はテントの中に寝転がって事態が変わるのを待つ。変化こそが待ち望んでいるものだ。大自然の劇的な変化を待っている。時々かかってくる衛星電話が撮影旅行のただひとつの変化だ。家族と話し、無事を告げ、撮影の日々に戻っていく。
 やっと訪れた変化は嵐だった。変化ではあったけれど、景色は見えなくなった。
「真っ白だ。何も見えない!」
 と絶望の風の中で叫ぶ。それは自分の人生の中におこった27歳の激的な一年とオーバーラップする。
 嵐を避け、やっとの思いで水分を含んだ塩のぬかるみの中から避難してきた。けれど男はテントの中から雨の降る塩湖を見やる。
「このまま雨が降り続いてしまえばいいのに。そしたらすべてが一変する」
 そうして待ちわびた変化が起こり、激的な風景が広がった。

【感想】
 今回の上映作品の中で一番好きだった。
 男はマレー・フレドリクス。カメラマン。男は変化を求めていた。写真は変化しないものの象徴だ。けれど男はその写真をインターバル撮影で撮りつないで、星空の運行を美しい動画に仕上げる。雲の流れる姿を夢のような動画にしてしまう。日の出を、月の出を、あらゆる変化を撮り、記録することで世界の変化を記録している。変化しないものを重ねることで、美しい変化を描き出す。男は、自身がその美しい変化を捕らえていることに気づいていない。自分がその変化の中にいることを実感していない。
 だから自分は変われないと思い込んでいる。取り憑かれた絶望は孤独をひきよせ、自己否定の深い闇へと導く。その淵に飲み込まれないようにするために、やりきれない思いを抱えて、精巧な作業と忍耐を求める単独の撮影旅行に出かけていく。シンプルで忍耐のいる作業は、サボると結果が出ない。だから、その作業が自己肯定へとつながる。
 見ていて感じたのは、マレーはまるで砂漠のラリーイストのような人だってこと。特にモーターサイクルラリーイスト。何もない空間に自分を置くと、自意識は溶けていく。自意識は境界線を失ってしまう。その感覚に近い。
 そうしてあいまいな自意識の流れていく先に、何かを求めて漂泊するのだ。「Swiss Machine」のウエリとはまた別の、もっと東洋的で切なく哀しく、それでいて無邪気な求道者。
 全体の構成はシンプルだけど、とてもドラマチックだ。目的があり、困難があり、自分との戦いがあり、最後に良いことがある。その良いことが、とてもシンプルなだけに共感も強い。オープニングの映像が、ラストで大きな意味を持つ、という意味でもキャッチーだしね。あの画が撮れた時点で、この映画は完成したも同然。変化は訪れ、旅は終わりの日を迎えた。
 舞台になったのはサウスオーストラリア州のエア湖。干上がった塩の湖。そこで雨をみたいと思ったよ。


■Crossing the Ditch(クロッシング・ザ・ディッチ)


【あらすじ】
 カヤックには親しんできたけれど、あくまで遊びのレベル。しかも海でカヤックに乗ったことはほとんど無い。そんなジェームスとジャスティンの二人の友達同士が思いついた。
「オレたちの住んでるオーストラリアから、ニュージーランドまでカヤックで行こうぜ!」
 オーストラリアとニュージーランドの間は2000キロも離れてる。その海をカヤックで渡りきったヤツなんていない。そんな厳しい海を、自分たちが渡りきれるのか? 物語はまず、二人の若者がさまざまな人たちの協力を得て身体を鍛え、冒険に必要なカヤックを造るところから始まる。
 その準備の途中、同じようにニュージーランドまでカヤックを漕いでいこうとしていたベテラン・カヤッカーに不幸が襲いかかる。ベテランでさえああなら、ひよっこのヤツらには無理に違いない。周りは揶揄し、家族は泣いて心配し、母親は必死に止めた。
 けれど彼らは旅立つ。トレーニングを積み、操船訓練をし、準備は整った。今やひよっこは海の男として成長したのだ。自信に満ちあふれた表情が示すように、旅は素晴らしいものとなった。
 が、困難は冒険の必至事項だ。それはオーストラリアとニュージーランドのちょうど真ん中あたりに待ち構えていた。進むも戻るもできない海のど真ん中。連日の航行による疲れ、予定の遅れ、トラブル、恐怖、心配、ストレス、鮫。さまざまな要因が若い冒険者のキモチをくじこうとする。けれど、若者は叫ぶ。オレたちは負けない! そしてそっとつぶやく。自分独りでは乗り越えられない。あいつがいるからこそ前に進めるんだ、と。
 さぁ漕げ。力の限り! こんな海なんて、ただの「溝(Ditch・ディッチ)」だぜ!!

【感想】
 王道! 友、苦難、挑戦、限界、絶望、家族。すべての要素が詰まった正当派「夏休みの大冒険」。
 「バンフ」の作品は事実を記録したものが多いから、そのほとんどがドキュメンタリーだ。(今回の6本なら、「Life Cycles」以外はすべてドキュメンタリー) その構成の特性上、記録映像の部分とインタビューシーンが主体になる。で、この「Crossing the Ditch」はそのインタビューシーンがすごく良かった。二人の若者のママたちキャラがたってること! 特にジャスティン(だっけ? 黒髪のほうだ)のママの泣き顔は本当に母親の悲しみがよく表れていて、すべての男子に「母ちゃんゴメン!」って言わせるチカラに満ちている。
 冒険そのものの描き方は、もしかすると凡庸なものかもしれない。けれど二人の若者の性格の違いや、それぞれのママの言葉、登場する多くの人物たちが際だっていて飽きさせない。何よりも、二人の主人公が本当に仲良さそうにしてるのがいい。なんせ一人が喋る時、もう一人はずっとしゃべるヤツを見てる。もう、オマエらつきあってるのか?ってくらいに。バカップルじゃねぇか!ってくらいに仲がいい。この仲の良さはほほえましくて、映画全体をただの冒険談ではない、もっと深いものにしたててる。
 ネタバレとかじゃないから言うけど、最後にはハッピーエンドが待ってる。けど、そのハッピー具合がハンパじゃない。ものすごい多幸感に包まれてボロボロ泣いちゃったからね。そんくらいラストシーンとしてはできすぎ。ラストに向かってぐんぐんキモチを高めていく映画。男友達何人かで見て、帰りにビールで乾杯して、友達を持つ幸福感を共有するのがオススメだと思うよ。



 さて、そんな「バンフ」の上映ツアーが以下のスケジュールで開催される。こんなにハイレベルなムービーを立て続けに見れるチャンスなんてそうそうない。詳細は以下に。僕も10月7日の東京で、もう一度上の6本を見直して、まだ見てない4本に触れようと思ってるよ。
 バンフ・マウンテン・フィルムフェスティバル 上映スケジュール
中でも初日にあたる9月10日は乗鞍高原野外特設会場での開催だからね。きっと秋の風が吹いて気持ちいいんだと思う。

チケットはすでに発売中。詳細はこちらへ。
 チケットについて





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